ジョルカブの生産台数はどれほどだったのだろうか? 一応、販売計画台数は年間1.5万台だった。 これはジョルカブのベースになったジョルノの新発売時の計画台数と同じである。 ジョルノはよく売れた印象があるので意外な感じだが、後年の計画台数は3.1万台なので、実際はそれくらい売れたのだろう。
ホンダのお客様相談センターに聞いてみたが、「個別の生産台数は公開しておりません」と言われてしまった。 だがパーツカタログニュース(誤訂正)を見ると、X(1999年)型の生産が車体番号が1008707の時に1(2001年)型の車体番号が1101314になっている。 ということは、1999年から2000年の2年間で1万台に到達していないことになる。 売れ行きが芳しくないことから、1型の生産はもっと少ないかもしれない。 以上のことから考えて、3年間で1.5万台から2万台の間と考えるのが妥当だろう。 そして2007年現在で、いまだに新車の流通在庫があるらしい。 ホンダにとっては忘れてしまいたいバイクかもしれない。
今ふりかえってジョルカブの計画台数をみれば、「こんなバイクが年間1.5万台も売れるわけないじゃん」と思うのだが、これでも原付の販売計画台数としては少ない方だ。 例えば、同じくレトロ調スクーターのジュリオ(これもあまり売れた方ではなかった)は3万台。 ジョルカブとほぼ同時期に発売されたジョルノクレアは2.5万台。 トゥデイが新発売された時は10万台だった。 販売計画と実績には当然ながらズレがあるが、ホンダがジョルカブをニッチ商品として捉えていたのは間違いない。
実際、「カブのエンジンを積んだ、マニュアルミッションの4stスクーター」がメインストリームの商品である訳がない。 ニッチを通り過ぎて、ほとんど変わり者向けのキワモノ商品である。 自分も発売当時は”ジョーク・バイク”だと思っていたくらいだ。 まさか数年後に自分が、その変人用バイクに乗っているとは思わなかったが。
だがジョルカブは単なる冗談バイクなどではなく、このスクーターにしかない特別な魅力を持っている。 しかし、その魅力が広く知られることもなく、ひっそりとフェードアウトすることとなった。 残念なことだ。 ここでジョルカブが市場に受け入れられなかった理由について考えてみたい。
スーパーカブC50カスタム(C50CM)とほぼ同じエンジンだが、C50CMの場合は「そりゃカブだから...」で許されるのだが、ジョルカブの場合は比べられるのはDioやJOGなどの2stスクーターだった。 ジョルカブだって最高速は原付一種の規制値(60km/h)まで出るが、加速力では全く勝負にならない。
また、交通事情に合わない減速比/変速比の問題も大きい。 特に1速はギヤ比が低すぎるし、シフトショックが大きいのも気になる。
個人的にはジョルカブのスタイリングは好きだ。 普遍的なスクーター然とした姿は好感が持てる。 だが外観は、ジョルカブの7年前に発売されたジョルノとほぼ同じというのも事実。 パーツの流用でコストが抑えられた利点はあったかもしれないが、同じスタイリングで速いの(ジョルノ)と遅くて面倒くさいの(ジョルカブ)があったら、速いのを選ぶよね、消費者としては。 中古のジョルノはタマ数も豊富だったろうし。
カラーリングも、ジョルノは特装車も含めてカラーバリエーションが豊富だったが、ジョルカブは工夫がなくて安っぽいソリッドカラー(赤、白)と、中途半端なツートンカラー(黒灰)。 スタイルが古典的なので、ヴィヴィッドカラーが似合わなかったのかもしれないが、もう少しやりようがあったのではないかと思う。
C50CMのエンジンを積んでいるのだから、当然燃費は良いし性格的にもおとなしい。 原付スクーターの用途の大半は、通勤通学だろう。 だが「ギア操作による楽しい走りを具現化した新感覚のスクーター」というなら、もっとスポーティーなキャラクターに振るべきだったと思う。
(クラッチレスとはいえ)マニュアル変速なのだから、自動二輪所有者のセカンドバイクと考えれば、原付一種(50cc)に拘る必要はなかったのだ。
元々、原付スクーターの収納は大きくないものだが、ジョルカブの場合は巨大なエアクリーナーケースとバッテリーの為、メットイン・スペースの底が浅く、半帽型ヘルメットしか収納できない。
また、通常のスクーターなら両足の間にカバンを挟んで走ることも可能(学生の頃乗っていたリードでセメント袋を乗せて運んだことがある)だが、ジョルカブの場合はフロアトンネルが盛り上がっているので積載できない。 そもそも左足(足首だけでなく、左足全体を動かす必要がある)でギヤシフトする必要があるので、荷物をニーグリップすること自体不可能だ。
ジョルカブの発売が1999年。 Nプロジェクト第一弾のApe(2001年)に先駆けること2年。 ちょっと変わったバイクが受け入れられる市場がまだ出来ていなかった。 生まれてくるのが、ちょっと早過ぎたのかもしれない。 同じ横型のSoloのように、ジョルカブがNプロの一員としてデビューしていたら... とも思うけど、Soloも全然売れなかったので、結果は同じだったかも!?。
環境問題の影響はバイクとて例外ではなく、燃費、排ガス、騒音ともに年々規制が厳しくなっている。 あのスーパーカブでさえ、次にモデルチェンジする時はキャブレターではなく、フューエル・インジェクション(FI)になっているだろう。
そういう話は置いておいて、もしリベンジが出来るとしたら、どういう構成にするべきかというのを妄想してみたい。
コンセプトは「ギア操作による楽しい走りを具現化した新感覚のスクーター」のままで良しとする。 この「新感覚」とは、「ギア操作による楽しい走りを具現化した」結果である。 つまり、従来のスクーターには希薄な「操る喜び」を最大化することが必要となる。
つまり車格は原付一種ということ。 これがスペイシー100の様に原付二種だと12inchホイールとなる。 走行性能的に10inchで不足ということはないので、より小型軽量にできる10inchホイールとする。 但し、リム幅は2.50inch、タイヤサイズは100/90-10 56Jとする。
国内生産前提の場合、コストを抑えるならCRF70(ジョルカブ発売当時はXR70Rとして販売)のエンジンを4速・セル化するのが一番簡単だろう。 ただ、75ccのライトボアアップ車に乗っていた経験からすると、成人男性ではこれでもアンダーパワーだ。 できればC90をベースにして、CRF70のクラッチ(一次減速比)、4速・セルフスターターを組み合わせたいところだ。 Apeのように、ユーザーが「イジる」のを前提とするならば、この構成でも充分魅力的だ。
エンジンの国内生産に拘らなければ、タイカブのエンジン流用という手もある。 タイカブC100EXの流れを汲むWave100(Φ50x49.5mm、97cc、4速ロータリー式)も良いが、Wave110(NF110、Φ50x55.5mm、109cc、二次側自動遠心ロータリー式4速)のエンジンが一番いいかもしれない。 Wave110のエンジンのマニュアルクラッチ版である、NICE110のエンジンはカブやモンキーマニアには垂涎の存在であり、これを積んだバイクがホンダから国内販売されれば、話題になるのは間違いない。 但し、エンジンの部品取り車として売れてしまう可能性もあるが。
あるいはいっそWave125iのエンジンを積むという選択肢もある。 ユーザーが手を加える必要がない速さと、環境性能を両立したエンジンで、メーカーとしては一番正しい選択かもしれない。
ミッションを4速にするか5速にするかが問題。 5速のメリットは大きいが、コスト、耐久性で難点もある。 ほとんど専用開発となるので、ちょっと厳しいかな。
ちなみにセルモーターは、通常のカブと同じ上面配置とする。 そうするとキャブレターが前を向くレイアウトになるが、メットインと燃料タンクの関係上、エアクリーナーをフロアトンネル部に配置するのでそれでいい。 250スクーターでも最近はフロアトンネルが大きいものが多い。 どうせ荷物は置けないのだから、中途半端に低くするよりも有効に活用した方がいい。
チェーン駆動のままでも良いのだが、メンテナンスの手間が掛かるのも確か。 ハイパワーエンジンだとチェーンも延びやすい。 いっそ、ハーレーみたいに歯付きベルトで駆動したらどうかとも思う。 ただ、そうするとユーザーが自由に変更できなくなるので、悩ましいところだ。
スポーツ車なので、当然テレスコ・油圧サス。 スイングアームのアルミ化は、「普通のスクーターとは違うんだ」という主張とともに、軽量化・ねじり剛性アップの意味合いがあるが、コストとの兼ね合いで断念する可能性もある。
前輪は当然。 後輪もディスク化するのは、記号としての意味が大きい。 これもコスト次第。
既存機種の外装部品を流用しても、売れなければ償却できない。 売価が2万円高くなったとしても、オンリーワンの魅力があればコアなファンをつかめるハズだ。
イメージ的には、Zoomerのように通常のスクーター・デザインの文脈から外れたデザイン。
これはスクーターを名乗るなら当然の機能である。
走りに重点を置くので、そのぶん燃費は悪くなる。 ツーリング用途も増えるので、200km近い航続距離を与える。