101ccボアアップ&二次側遠心化


純正

記事中の表を参照

オークションにて落札

125ccエンジンの復活に時間が掛かる為、急遽リリーフとして復活させたジョルカブエンジンベースの96cc暫定エンジン。 乗る前は、「125ccを体験したら96ccはアンダーパワー」とか「二次側遠心から一次側には戻れない」と考えていたので、大きな期待はせず「とにかく走ってくれればいい」としか思っていなかった。

しかし乗ってみると、昔の感覚(といっても2年前)を思い出して、「これはこれでアリでは?」と思うようになった。 49.5mmストロークのクランクシャフトの回り方は、125ccエンジンの55.5mmストロークとまた違って、トルクの出方が穏やかで”まったり”と走るには心地よい。 吹け上がりも軽い気がする。

とはいえ不満がない訳ではない。 やはり最大の問題は、一次側遠心クラッチだ。 JUNのスプリングで強化したクラッチは、伝達トルク自体は、96cc+PE24+スーパートラップのパワーをしっかりと受け止めてくれる。

しかしクラッチの引き摺りがあるのか、シフトダウンが引っかかってうまくいかない。 アイドリングで1速からニュートラルへ落とすのも一苦労なので、シフトアップして4速からニュートラルに落とすようにしている。 停車時ならOKだが、信号手前で徐行しながらギヤを落としたいときなどに困ってしまう。

96ccエンジンを復活させる際に二次側遠心化をあきらめたのは、完成までにかかる時間と費用の問題だった。 C100EXのRクランクケースカバーとドライブプレート、ドライブギヤは在庫があるが、クラッチ本体とクランクシャフトが必要になる。 特にクランクシャフトは高価で、新品購入すれば時価\22.4kである。

また、同じ49.5mmストロークでも、50cc用シリンダが使えるJUNのロングストローククランクと異なり、C90やC100EXではシリンダ長が長くなる。 よってシリンダとピストンも新調しなければならない。

ところが面白いもので、二次側遠心化を諦めたあとになって、オークションでC100EXのエンジン部品が立て続けに出品された。 そのうちの1つは、見た目のコンディションがかなり悪かったが、クラッチとミッションが使えれば御の字と考え、落札してみた。

クラッチアウターは歯面の磨耗もなく、再利用は十分に可能だった。 クラッチプレートは、ディンプル付きの 22311-107-000 が使われている。 これは、プレーンタイプの 22311-KN4-680 に交換する。

フリクションディスクは、125ccほど伝達力にシビアではないので、安い 22201-GBF-B40 にする。 クラッチスプリングは、在庫がある 22401-KN4-680 でも耐えられそうだが、念のため125ccエンジンと同じ 22401-GBF-830 を使用する。

入手した部品の中には、ドライブプレートとドライブギヤもあったが、遠心クラッチ部のドラムの磨耗が激しいので、これは手持ちの部品を使うことにする。

4速ミッションも比較的キレイな状態だった。 これだけで落札価格分の価値はあるので、お買い得だったことになる。 前期型(HA05)エンジンなので、3速を組み替えてHA06仕様に変更する。

シフトスピンドルが曲がっていたので、それは新調した。 シフトアームやキックシャフトはそのまま使える。

こんなにバラバラにされた状態で出品されているのだから、重大なエンジントラブルが起きたであろうと容易に想像がつく。 考えられるのはシリンダーヘッドやピストンの焼き付き、そしてクランクシャフトの損傷だ。

ヘッドについては別に出品されていて、特に問題はなさそうだった。 シリンダーとピストンは出品されていなかったので、再使用できないほどの損傷があったのだろう。 そのような場合、ほとんどの原因は潤滑系にあり、クランクシャフトにも相当なダメージを与えるはずだ。

そういう訳で、クランクシャフトの再利用には、最初から望みを持っていなかった。 実際に現物はコンロッド大端部にミリ単位のガタがあり、小端部も錆が浮いていた。 修理するなら、コンロッド、クランクピン、コンロッドベアリング、クランクベアリングの交換が必要だ。 当然、内燃機屋に依頼することになるので、工賃も必要となる。 時間も掛かるし、費用的にも新品を購入するのと大して変わらないだろう。

だが、使用者の不注意で瀕死のダメージを負ったクランクを考えると、このまま廃棄するのが不憫に思えてきた。 直せるものなら直してやりたい。 ちょうど125ccエンジンのクランクを井上ボーリングに振れ取りに出す予定があったので、一緒にお願いすることにした。

交換する部品はこちらから支給することにしたのだが、C100EXのパーツリストによると、コンロッドベアリングはコンロッドとクランクピンの現物公差に合わせて選択する必要があるらしい。 発注時にコンロッドとクランクピンの公差を指定することは出来ないのだ。 面倒だが2回に分けて発注することになった。

ところが届いたコンロッドは「A」、クランクピンは「3」で、選択表では適合するベアリングが存在しない。 ホンダに問い合わせてもらった結果、「実際にはどの組み合わせでもクリアランスは設計値に収まる」という回答だった。

そんないい加減なことでいいのかと疑問に思ったが、それが回答であれば仕方ない。 3種あるコンロッドベアリングのうち、真ん中のブルー(91102)を選択することにした。

後日、公差の数字が入った表を入手することができた。

コンロッドの部品を送って数日後、分解組立芯出しされたクランクシャフトが届いた。 結果的には部品代+工賃で\14kくらいと、新品を購入するより安く仕上がった。 何より廃棄されるしかなかったクランクが蘇ったのが嬉しい。

これで腰下についてはほぼ目処が立ったのだが、シリンダーとピストンがまだ決まっていない。

選択肢としては、以下のようなものがあった。

1.現在のJUNのシリンダー(ボア49.6mm)にゲタを履かせる 排気量は96cc
 2.C100EX(ボア50mm)のシリンダーとピストン 排気量は97cc
 3.JUNのカブ90ノーマルヘッド105ccボアアップキット(ボア52mm)
 4.支那エンジンのピストン(ボア52.4mm)に合わせてC100EXのシリンダーをボーリング 排気量は107cc
 5.SP武川のS-Stage G-TYPE ボアアップキット(ボア53.5mm) 排気量は111cc

どれも一長一短である。 単純に排気量を大きくしたいならS-Stage G-TYPEなのだが、果たしてジョルカブのクランクケースが耐えられるだろうか?

それにスカート外径が大きいシリンダーだと、クランクケース側の穴を拡大する必要がある。 ジョルカブの穴径は55mmあるが、入手したC100EXのクランクケース(上の写真)は57mm近くあった。 ボーリングして拡大するのは内燃機屋に頼めば可能だが、また時間と費用が掛かってしまう。

そんなとき、よくblogにコメントを寄せてくださるかぶやさんが「中古のC100EXシリンダがあるので譲りますよ」とのお申し出があった。 渡りに船と、有り難く使わせて頂くことにした。

このシリンダを支那ピストンに合わせてボーリングしようと思ったのだが、スカート径が54.2mmなのでボア52.4mmだと0.9mmの肉厚になる。

かぶやさんには他にもWave125のピストン(中央、52.4mm)と、Wave100の1mmオーバーサイズピストン(右端、51mm)を譲っていただいた(左端は支那ピストン)。 どちらもピストン頂部が凹んでいるので、若干圧縮比が下がることになる。 結局、信頼性重視で51mmピストンを選択した。

余談だが、後日入手した武川の52mmシリンダーは、スカート径が53.8mmなのでやはり0.9mmの肉厚だった。 ならば52.4mmでも問題なかったかもしれない。

ピストンとピストンリングには、WPC&MOS2処理をおこなった。 オイルリングはやらないと思っていたのだが、サイドレールにもWPC&MOS2処理がされていた。 ただ、サイドレールは薄いので費用対効果的にはやる必要はなかったかもしれない(本数が2本とカウントされるので、価格が倍になる)。

シリンダーには、プラトーホーニング仕上げを施した。 シリンダをボーリングするなら、これは本当にオススメだと思う。

LクランクケースのM6タップ穴が、1箇所ねじ山上がりを起こしていた。 悪いことにそのタップ穴は、オートカムチェーン・テンショナーと導通しており、オイルが滲むようになっていた。

仕事でヘリサートには馴染みがあったが、ホームセンターなどではあまり置いていない。 オークションでヘリサートと同等のリコイルというのが出ていたので購入した。

まず6.3mmのドリルで下穴を通す。 次にリコイルキット付属のタップでリコイル用のねじを切る。 下穴用ドリルとタップハンドルはキットには付属しないので、別途用意する必要がある。

ねじを切れたら、付属のハンドルを使ってリコイルインサートをねじこんでいく。 力はほとんど必要ないが、逆回転して戻そうとしても回らないので、慎重にねじこむ。 インサート終端がねじ山3/4周くらい入ったところで、付属の叩き棒を使ってインサートのタングを叩き折る。

96ccエンジンにはキタコの強化オイルポンプを使用していたが、なぜかオイルポンプ・ピボット(15384-178-000)を入れるとポンプが回らなくなってしまう。

入手したC100EXエンジンの部品にオイルポンプも付いていたので、それを使おうとしたのだが、オイル切れで焼きついたエンジンなので、当然オイルポンプの中も擦れて傷だらけになっていた。

キタコとC100EX純正のどこが違うのか。 ケースはほとんど同じなのだが、ポンプのスピンドルの長さが違っていた。 キタコの方が長いので、段差になっている部分がオイルポンプ・ピボットに押し付けられてしまうのだ。

結局、キタコのポンプにC100EXのスピンドルを組み合わせて使用した。

以前にジョルカブのクランクケースの穴径を測ったときΦ55だったので、C100EXのシリンダはそのまま付くだろうと考えていた。 しかしシリンダガスケットを当てがってみれば、Lクランクケースの穴が小さいのが一目瞭然だ。

本来なら内燃機屋さんに加工を頼むところだが、時間ないので自分で削ることにする。

ガスケットからはみ出た部分を、油性マジックでマーキングしてケースを割り、リューターで慎重に削っていく。

30分程度で加工は完了。 Rクランクケースは削る必要はなかった。

これでシリンダをセットできると思ったのもつかの間、今度はシリンダのフィンが下セルと干渉する。 ジスクグラインダで大胆にカットする。

エンジンを下ろして分解、再組み立てで土日掛かってしまったが、なんとか完成した。

エンジンを載せて走ってみた。 まず感じるのが、シフトペダルの踏力が圧倒的に軽くなったこと。 同じクラッチスプリングを使っている125ccエンジンそれよりも軽い。 カム機構が違うからだろう。 シフトアップ/ダウンともに、なんのコツも必要ない。

エンジンについては、振動が減ってとにかくスムーズに回る。 クランクやシリンダをはじめ、ほとんどが純正部品の流用なので当たり前かもしれないが、まるでノーマルのエンジンのようだ。 振動が少なくスムーズに吹け上がるので、回して楽しめるエンジンになった。

暖気を少し長めにしないと、走り出しのところでエンストしそうになる。 エンジンノイズが小さくなったことを含めて、鉄シリンダーの影響かもしれない。 夏場の熱ダレが心配ではあるが、暑いタイで生まれたC100EXなので、それほど心配はいらないだろう。

ボアアップにより、排気量が5cc増えているが、出力向上を体感することはない。 元々、パワーアップが主眼ではないので不満はない。

もしもジョルカブが市販された時に、C100EXの97ccエンジンを下セル化して積んでいたら、もっと売れていたんじゃないかと思う。 そういう意味で、本来あるべき姿になったとも言える。

星:★★★★

コメント:このまま市販してほしい