特集:C.D.I.について


1.C.D.I.とは

ガソリンエンジンでは、気筒内に吸入した混合気を爆発させる為に、スパークプラグによる火花を利用する。 そこでスパークプラグに「適切なタイミングで一瞬だけ」「高電圧(2〜3万V)」を掛ける必要がある。 電源(エンジンが持つ発電機)の電圧は12V程度だが、これを昇圧するのが点火コイル。 そしてタイミングを司るのが、初期にはポイント方式が使われていたが、現在ではフル・トランジスター式(誘導点火方式)やカブにも使われているC.D.I.(キャパシター・ディスチャージド・イグニッション・システム)方式(容量放電点火方式)が使われている。

フルトラやC.D.I.の場合、フライホイールに設けた突起をピックアップ(近接センサ)で検知して、クランクの回転角度(およびエンジンの回転数)を検知している。 そのタイミング情報を元に、フルトラやC.D.I.で適切な進角を設定して、点火コイルに電気を流している。

2.進角とは

エンジン性能を引き出す為には、爆発工程の間の燃焼圧力の和が最大になるようにするべきだ。 具体的には、ピストンが上死点を少し過ぎたあたりで燃焼圧力が最大になるようにする。 だがスパークプラグに火花が飛んでから、燃焼室内の混合気全てに燃え広がる(火炎伝播する)までには、無視できないタイムラグがある。 そこで、ピストンが上死点に達する前に点火してやる。 これを進角という。

火炎伝播のタイムラグは、エンジンの回転数に関わらずほぼ一定である。 一方で、エンジンの回転数はアイドリング(1,700rpmくらい)から10,000rpm以上まで、幅広い回転数で使用される。 最大燃焼圧力のタイミングを常に最適にする為には、エンジンの回転数に応じて進角を調整する必要がある。 最近のクルマやバイクでは、回転数のみならずスロットル開度やギヤポジションの情報も取り入れた三次元マップで点火タイミングを決定している。 もちろん、カブに使われているC.D.I.はそんな大層な物ではない。

3.なぜCDIを交換するのか

3−1.進角の変更

前述のように、点火時期はフライホイールとピックアップの位置関係と、C.D.I.の設定の2つの要素で決定される。 ピックアップの取り付け位置をずらす、あるいはフライホイールの突起の位置を変えれば、進角を調整することは可能だ。 ただしこの場合は、全回転域で点火位置が前後するだけである。

ジョルカブなどセル付きエンジンの場合、ピックアップは L クランクケースカバー側に取り付けられる。 写真を見てもらえばわかるが、ピックアップを移動させるスペースはほとんどない。 フライホイールの変更もあまり現実的とは言えない。 よって進角を変更するには、C.D.I.の交換に頼ることになる。

社外品として販売されているC.D.I.の場合、純正よりも進角が大きかったり、回転数に応じてきめ細かく変化させる物がある。 また、進角の量と回転数を変更可能なデジタルC.D.I.も存在する(ただし高価)。

3−2.より強力な火花

C.D.I.方式には放電時間が短いので、特にアイドリング〜低回転時での安定性で不利になる。 社外品のC.D.I.では放電時間を長くするようにした物もあるらしい。 永井電子のULTRAみたいなものか?

3−3.リミッター解除

スーパーカブ50カスタムやリトルカブ(セル付)、ジョルカブなど4速50cc車のC.D.I.には、原付一種の最高速度(60km/h)を超えないようにする為に、リミッター機能が存在する。 社外品にはリミッター機能がないので、リミッター外しの一環として社外品に交換する意味はある。

4.ホンダ純正C.D.I.について

4−1.分類

横型エンジン搭載車のCDIを調べてみた。 年式によって6Vと12Vがあるが、ここでは対象を12Vに絞る。

まず、カブ系(6P)とモンキー系(4P+2P)ではCDIのカプラ形状が異なる。 変換ハーネスを用意すれば、カブにモンキーのCDIを流用することも可能かもしれないが、面倒なのでパス。 カブ系に絞ると以下のようになる。

分類 機種 年式 C.D.I.部品番号
50cc4速系 ジョルカブ X,1 30410-GK4-762
スーパーカブ50カスタム
リトルカブ(セル付)
3速系 スーパーカブ50 30410-141-751
リトルカブ(セル無)
スーパーカブ70
90cc系 スーパーカブ90 30410-GB6-018
CD90 H,N
100cc系 スーパーカブ100EX 30410-GB6-921
Wave100, EX5 3,4,6 30410-KRS-901
Wave110 X,Y,1 30410-KFL-851
その他 CD50 T-7 30410-065-651

4−2.進角

機種 進角
ジョルカブ
スーパーカブ50カスタム
BTDC11°/1,700rpm => 22°/3,100rpmに進角
4速時 20°/7,700rpm(リミッター)
スーパーカブ50/70 BTDC27°/1,700rpm(固定進角)
スーパーカブ90 BTDC15°/1,700rpm => 2,000〜3,000rpmに15°から28°にまで進角(電子式)
スーパーカブ100EX 点火時期 Fマーク : BTDC 15°/1,600rpm
進角開始回転数 : 2,100+−300rpm
進角終了回転数 : 3,200+−300rpm
最大進角度 : BTDC 28°

参考までにWAVE125Sの場合は、2,000〜3,000rpmに37°にまで進角しているらしい。