特集:一次減速比について


1.一次減速比とは

ガソリンエンジンの最高回転数は、低回転な物でも5,000rpm、レーシングエンジンでは20,000rpmに達する。 クルマやバイクの動力源に利用するには、当然ながら回転数を減速する必要がある。

ここで”減速”と”変速”を分けて考える必要がある。 変速機はなるべくコンパクトにしたいので、必要な変速幅が得られる最小のギヤにしたい。 また、変速機のギヤを高速で回転させるのは、操作性や耐久性に支障が出る。 よって、エンジンからの回転を変速機に入れる前に減速することとなる。 この減速段を一次減速と呼ぶ。

変速機の回転をタイヤへ伝える段階でも、また減速される。 チェーン駆動なら前後のスプロケットの歯数差によって減速比が決定される。 これを二次減速という。

2.カブ由来のエンジン

ジョルカブのエンジンの直接的なルーツは、スーパーカブ50カスタムである(以下カブ50)。 カブ50エンジンのセルモーターを、シャリー50AT同様にエンジン下部に配置した物だ。 よって、ジョルカブの一次減速比は、カブ50同様の4.058(17T/69T)となっている。

ジョルカブとカブ50の大きな相違点は、そのホイールサイズである。 ジョルカブの10インチに対して、カブ50は17インチと大きい。 その分、二次減速には小さな減速比(3.230)が与えられている。

ちなみに、初代スーパーカブ(C100)の一次減速比は3.722であった。 現行スーパーカブ・シリーズの一次減速比は、タイカブC100EXも含めて4.058である。

3.なぜ注目するのか

3−1.二次減速比の制約

ジョルカブの二次減速比は、ドライブ:14T/ドリブン:33Tの2.357である。 ボア/ストローク・アップするとトルクが増大するので、減速比を小さくしてより高速で走ることが出来る。

だが横型の場合、ドライブ・スプロケットは16T(もしくは17T)が最大である。 ドリブン側も、ジョルカブの場合は31Tが最小となる。 その結果、二次減速比は1.9375(16Tの場合)が最小となる。

3−2.ドリブン・スプロケットの寿命

31Tのドリブン・スプロケットは純正にはないので、社外品を流用することになるのだが、材質・焼入れに問題があるのか異常に磨耗が早い。 スチール製なのにAFAMも真っ青な減り方をする。 出来れば純正の33Tを使いたいが、その場合の二次減速比は最小で2.0625(16Tの場合)となる。

4.どうすればいい?

4−1.マニュアルクラッチ車向け強化クラッチの事例

SP武川やキタコが発売している強化クラッチの中には、一次減速比が3.722(18T/67T)になっている物がある。 これらの単品パーツだけ入手して流用できないか?と思ったが難しそうだ。

4−2.モンキー Z50 JZ〜JEの事例

古いモンキー(いわゆる6V?)のパーツリストを見ていたら、一次減速のドライブ・スプロケットが遠心クラッチと同じ構造であることが判明した。 一次減速比は3.722である。 これらの部品を流用すれば、ジョルカブの一次減速比を小さくすることができそうだ。 下がその部品構成。 16、17、18の3つを交換する。

こちらがジョルカブの遠心クラッチ。

交換する部品は次の3点。 もちろん、他にRクランクケースガスケットなども必要だ。

部品番号 部品名称 個数
23110-098-740 ギヤー,プライマリドリブン(67T) 1
23112-041-050 アウター,ドライブギヤー(18T) 1
23120-041-000 ギヤー,プライマリードライブ(18T) 1

4−3.CRF70のパーツの流用

遠心クラッチ装備で一次減速比が3.722(18T/67T)の機種が存在した。 それはCRF70だ。 C70/90と同様、クラッチウェイト28枚仕様になっている。

ジョルカブのノーマルクラッチから交換する部品は次の通り。 クラッチ・スプリングは、JUNの強化スプリングの方がベターだ。

部品番号 部品名称 個数
22120-GCF-670 センター,クラッチ 1
22351-178-120 プレート,ドライブ 1
22401-092-900 スプリング,クラッチ 4
22531-178-000 ウェイト,クラッチ 28
23110-GCF-670 ギヤーCOMP,プライマリドリブン(67T) 1
23112-041-050 アウター,ドライブギヤー(18T) 1
23120-041-000 ギヤー,プライマリードライブ(18T) 1

4−3.クラッチ強化との関連性

ボアアップすれば、おそらくクラッチも一緒に強化するだろう。 SP武川などの社外品の強化クラッチの場合、ドライブプレートとドライブギヤー・アウターの形状が異なるため、純正部品流用による一次減速比の変更は不可能だ。 一次減速比を変更したいのであれば、CRF70の部品に組み替えた上で、ドライブプレートを追加工してクラッチウェイトを32枚に変更するのがよいだろう。

5.二次側クラッチの一次減速比について

5−1.CD90の場合

二次側クラッチの機種は、マニュアル、自動遠心を問わず17T/69Tの4.058の機種が大半である。

大半ということは例外も存在するわけで、インドネシアで生産されていたWIN100というCD系(二次側マニュアルクラッチ)の機種は、一次減速比が18T/67Tの3.722であったようだ。

このWIN100の系譜は、インドのヒーロー・ホンダ社で生産されているCD100SS、Passion Plus、Splendor Plus、CD Deluxe、CD Dawnなどに受け継がれており、これらの機種も一次減速比は3.722である。

なぜインド、インドネシア両国のCDだけが、一次減速比がハイギヤードになっているのかは不明である。

部品番号 部品名称 個数
22110-GF6-010 OUTER COMP., CLUTCH 1
23121-GF6-000 GEAR, PRIMARY DRIVE (18T) 1

クラッチアウターは、他の機種でも流用できそうだが、ドライブギヤーはCD90/100専用である。

CD90/100のクランクシャフトは、NICE110のクランクとも異なる。 もちろん、C100EXやWave110の二次側自動遠心クラッチの機種に流用することもできない。

試しに発注してみたが、どちらも国内で入手できた(2008年3月)。 しかし、WIN100自体が国内販売された機種ではなく、既に生産中止になっているので、部品供給は不安定なようだ。